地震による車両損害は自動車保険に付帯されている「地震・噴火・津波車両損害特約」で担保される

投稿日:2018年9月6日

地震・噴火・火災による損害は車両保険で補償されない

平成最後の秋は、関西空港を筆頭に近畿圏に大ダメージを残した台風21号や北海道で発生したマグニチュード6.7の地震など、大きな天災に見舞われました。このような中、被災者の自動車が傷ついたという方もいらっしゃると思います。今回は地震で発生した、車両損害自動車保険で補償されるか確認したいと思います。

地震・噴火・津波による車両損害は車両保険で担保されない

最初にとても大切な情報をお伝えする必要があります。車両保険は大きく2つのタイプがあることはご存知でしょうか。

1つが、どのような車両損害事故も補償するといわれているオールリスクに対応するタイプ。もう1つが、自損事故を除いた車両損害事故を補償するというタイプ。

おおよそ、このようなイメージで車両保険は付帯されていると思います。ただ、ここでお伝えしたいのが、車両保険は地震や噴火、津波による損害を一切補償の対象としないのです。

自動車保険を通常の形で契約をしていると、地震・噴火・津波による損害車両は実費で修理もしくは買い替えです。

東日本大震災で津波で流された99.9%以上の自動車は保険金の支払い対象外となり、多くの方が財産を失ったのです。0.1%以下の方しか、保険金を受け取ることがなかったと思います。

実は大切な自動車という財産を守るための自動車保険の特約が、10年以上も前から存在しているのです。

 

えぇ!!!地震による損害で車の修理代はでないの!?

そうよ~。契約時にきちんと説明を受けてね♪支払い対象外よ~

 

地震・噴火・津波が起きたときに使える自動車保険の特約

保険会社の社員でも、少し難しい代理店や契約に携わった者しかわからない内容だと思いますが、実は自動車保険には特約で地震や噴火、津波から自動車の車両損害を守る特約があるのです。

ここで勘違いして欲しくないことがあります。ダイレクト型の自動車保険を販売しているアクサ損害保険が特約を販売していますが、それは違う特約なのです。一般的に世の中に出されている特約は一時金が支払われるタイプのものなのです。

早速、この2つの特約の違いについて確認をしたいと思います。

自動車保険の地震・噴火・津波車両損害特約について

私が保険会社の営業現場で働いていた10年以上前には既にあった特約です。もう無くなってしまったのではないかと思い、保険会社の約款を確認いたしましたきちんと残っておりました。

この特約は通常保険金の支払い対象とならない、地震・噴火・津波による車両損害でも車両保険を使うことができるようにする特約です。

損保ジャパン日本興亜と三井住友海上の約款に記載されている内容を確認したいと思います。

損保ジャパン日本興亜

地震・噴火・津波車両損害特約
第1条(保険金を支払う場合)

当会社は、この特約により、普通保険約款車両条項第2条(保険金を支払わない場合-その1)③および⑥の規定にかかわらず、契約自動車について次のいずれかに該当する事由によって生じた損害に対しても、保険金を支払います。

地震もしくは噴火またはこれらによる津波
② ①の事由に随伴して生じた事故またはこれらに伴う秩序の混乱に基づいて生じた事故

第2条(保険金の支払時期)

(1) 前条の規定により保険金を支払う場合において、次に掲げる特別な調査が不可欠なときは、普通保険約款基本条項第24条(保険金の支払時期)(1)の規定にかかわらず、当会社は、同条項<用語の定義>に定める請求完了日からその日を含めて下表に定める延長後の日数を経過する日までに、保険金を支払います。この場合において、当会社は、確認が必要な事項およびその確認を終えるべき時期を被保険者または保険金を受け取るべき者に対して通知するものとします。

【特別な調査】

災害対策基本法(昭和36年法律第223号)に基づき設置された中央防災会議の専門調査会によって被害想定が報告された首都直下地震、東海地震、東南海・南海地震またはこれらと同規模以上の損害が発生するものと見込まれる地震等による災害の被災地域における普通保険約款基本条項第
24条(1)の事項の確認のための調査

【延長後の日数】

365日

(2) (1)に掲げる必要な事項の確認に際し、保険契約者、被保険者または保険金を受け取るべき者が正当な理由がなくその確認を妨げ、またはこれに応じなかった場合(注)は、これにより確認が遅延した期間については、(1)の期間に算入しないものとします。
(注)その確認を妨げ、またはこれに応じなかった場合必要な協力を行わなかった場合を含みます。

第3条(他の特約の一部不適用)

当会社は、この特約により第1条(保険金を支払う場合)の保険金の支払対象となる場合であっても、事故・故障時代車費用特約第1条(保険金を支払う場合)(1)の代車費用保険金を支払いません。

三井住友海上

地震・噴火・津波「車両損害」特約
第1条(この特約の付帯条件)

この特約は、この保険契約に普通保険約款車両条項の適用がある場合で、保険証券にこの特約が記載されているときに付帯されます。

第2条(保険金を支払う場合)

当社は、この特約により、普通保険約款車両条項第4条(保険金を支払わない場合)(1)③および⑥の規定にかかわらず、 ご契約のお車について次のいずれかに該当する事由によって生じた損害に対しても、車両保険金を支払います。

地震もしくは噴火またはこれらによる津波
② ①の事由に随伴して生じた事故またはこれらに伴う秩序の混乱に基づいて生じた事故

第3条(保険金の支払)

普通保険約款基本条項第21条(保険金の支払)(1)の確認をするために、次表「事由」に掲げる特別な調査が不可欠な場 合には、当社は、その調査を同条(2)の特別な照会または調査に加え、請求完了日 (注1) からその日を含めて次表「期間」に 掲げる日数 (注2) を経過する日までに、第2条(保険金を支払う場合)の保険金を支払います。この場合において、当社は、 確認が必要な事項およびその確認を終えるべき時期を被保険者または保険金を受け取るべき者に対して通知するものとします。

【事由】

災害対策基本法(昭和36年法律第223号)に基づき設置された中央防災会議の専門調査会によって 被害想定が報告された首都直下地震、東海地震、東南海・南海地震またはこれらと同規模以上の損害が 発生するものと見込まれる地震等による災害の被災地域における普通保険約款基本条項第21条(1)① から⑤までの事項の確認のための調査

【期間 】

365日

(注1)請求完了日 被保険者または保険金を受け取るべき者が普通保険約款基本条項第20条(保険金の請求)(3)および(4)の規定による手続を完了した日をいいます。

(注2)次表「期間」に掲げる日数 普通保険約款基本条項第21条(保険金の支払)(2)①から⑤までを含めて、複数の「事由」に該当する場合は、そのうち最長の日数とします。

第4条(他の特約との関係)

(1)当社は、第2条(保険金を支払う場合)の規定により車両保険金が支払われる場合は、次の特約の規定を適用しません。

①レンタカー費用特約
②ロードサービス費用特約

(2)この保険契約に他車運転特約が付帯される場合、同特約第2条(保険金を支払う場合)(4)の「他の特約」には、この特約 を含めないものとします。

(3)この保険契約に臨時代替自動車特約が付帯される場合、同特約第2条(保険金を支払う場合)(4)の「他の特約」には、こ の特約を含めないものとします。

日本を代表する2社の保険会社の約款にはきちんと車両保険では保険金の支払い対象とならない、地震・噴火・津波を担保すると書いてあります。つまり、車両保険においても、車両保険金額を上限に地震による損害が保険金の支払い対象になるのです。

私の経験ですが、この特約を付帯するためには、保険会社の担当者が1件ずつ会社に引受申請をする必要がありました。手間隙がとにかくかかる特約でした。代理店さんからの要望に応じて、1契約ずつ引受申請をあげておりました。

割増保険料もさほど多くなく、代理店さんからの強い要望がないかぎり、引受申請をあげたくない特約でした。営業担当者、代理店ともに手間隙が非常にかかる作業でした。

今も約款に特約として残っているということは、どこかで引受はしてもらっているはずです。保険会社としては大規模災害が起きたときに、保険金の支払いが莫大になるリスクをおさえたいので、積極的には販売しないと思います。

保険会社に本当に強く言える代理店さんであれば特約付帯の可能性はゼロではないはずです。保険会社の担当者や課長、支店長(部長)にも強く引受要請ができる代理店です。

自動車保険の継続時に、車両保険で地震・噴火・津波まで補償できるようにしてくれないかと、興味がありましたら代理店さんにご相談ください。

しぶとく代理店さんにかけあってみるカメー!

 

自動車保険の地震・噴火・津波による車両全損時一時金特約について

この特約は東日本大震災が発生した直後に保険会社が開発をして販売を始めた特約です。大手の損害保険会社は特約として販売していると思いますが、通販型(ダイレクト型)自動車保険では、アクサ損害保険が取り扱っているぐらいだと思います。※執筆時の情報です。

この特約は車両が地震や・噴火・津波で損害を被ったときに、50万円を上限に車の修理・再購入費用のための保険金を支払うというものです。生活再建の支援を目的とした地震保険(最大、建物と家財にかけた保険金額の半額を補償)の考え方に少し近いかもしれません。

東日本大震災後にこの特約をPRするプロモーションをした経験がありますが、あの大きな災害が起きた後でも、加入が伸びたという感覚はありませんでした。大規模災害の場合は仕方がないと思ってしまうのでしょうか…。

私はきちんと特約をつけています!

 

地震などで被災した車両損害の保険金を請求するための手続き

自動車が地震などで損害を受けたら、まずお車を修理・点検を依頼しているディーラーや整備工場に持っていく、自走ができない状態ならレッカーで運んでもらうようにしてください。

保険会社への連絡は早いほうがいいですが、大規模な震災の直後は電話がパンクしているはずです。2から3日経ってからでもかまいません。おまわりさんを呼んでもまずきてくれないと思うので、写真を撮っておけば後で証明ができます。

次に、修理ができる状態かディーラー・整備工場に判断をしてもらってください。

地震・噴火・津波による車両全損時一時金特約を付帯しており、修理代が50万円を超えるようであれば、保険金が50万円まで支払われることになります。ガラスの破損や少々の傷であれば、その修理代金が保険金として支払われるはずです。

保険金請求の報告は慌てずに、きちんと写真を撮っておけば大丈夫よ~

最後に

自動車保険 口コミ」の記事でも書きましたが、このような大きな災害時に助けとなってくれるのが代理店さんなのです。機械的に1件ずつ契約をするような仕組みの中において「地震・噴火・津波車両損害特約」のような情報はまず出てこないと思います。

もう、どの代理店さんだったか忘れてしまい個別にお薦めすることができませんが、もし今から新たに自動車保険に加入するのであれば、どこの保険会社でなく、このような特約を薦めてくれる代理店さんが推奨する自動車保険に入りたいと思いませんか。

著者の情報

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日吉 浩之自動車保険の専門家
国内系大手損害保険会社でにて主に自動車販売会社の代理店営業を経験したのち、SBIホールディング社にて日本最大級の一括見積もりサイトの運営に従事。生損保約40社とのビジネスを介して、保険のダイレクトマーケティングを行ってきました。現在は株式会社プリモポストの代表取締役として、アニメーション動画(Youtube)を通じて保険をわかりやすく紹介する事業にも取り組んでいます。
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カテゴリー:編集長コラム,自動車保険