自動車保険の事故対応満足度はフェイク満足度!?専門家が解説!事故対応の満足度は所属アジャスターの力量次第

投稿日:2018年10月24日

事故対応はアジャスターの力量次第

ダイレクト型の損害保険会社がテレビCMなどで「事故対応の満足度」という指標をPRするようになってきいました。この満足度調査の数値を参考どこの保険会社に自動車保険を契約をするか検討する方もいると思いますが、自動車事故が起きたら保険会社の誰がキーマンで、そのキーマンがどのような動きをしているのか。そして、各社の満足度調査を参考に自動車保険を決定していいか専門家の視点からお伝えいたします。最後までお読み頂けると嬉しいです。

各保険会社が発表している「事故対応の満足度」結果をまとめてみた

ダイレクト型の損害保険会社が公表している自動車事故の事故対応の満足度調査結果をまとめてみました。

保険会社満足度
(%)
満足
レベル
満足
レベル
満足
レベル
中間
レベル
不満
レベル1
不満
レベル
不満
レベル
ソニー損保92.6%69,74715,5343,703-03,0873,971
アクサ損害保険79.1%2,0531,240-587-123160
チューリッヒ保険96.6%-------
三井ダイレクト92.2%-------
イーデザイン損保93.6%2,838490-88-7460
セゾン自動車火災(おとなの自動車保険)86.1%2,1542,3591,026-394243254

※各社のホームページからデータを参照しております。数字の更新がある可能性もありますので、最新情報は随時各社のHPを参照ください。また、チューリッヒ保険三井ダイレクト社は結果数字のみを公表。SBI損保は公表数値なし。

各保険会社の質問内容が一律でないため、アンケート結果が満足度70%台から90%台とばらついた結果になっています。少し理解しがたいですよね。

事故対応満足度はお客さまにPRしやすい情報ですが、他社と同条件で比較できない数値を見比べていったいどのような意味があるのでしょうか。このような数値は社員の評価や委託先の評価等に使われる数字だと思うのです。

事故対応満足度から、各社の事故対応力を確認しようとされたかたへ。事故対応で重要なのは、事故を起こした地域に事故対応のキーマンとなるアジャスターがいるか、いないかなのです。

事故対応満足度はアジャスターの力量に応じてあきらかに変わります。

初めてアジャスターという単語を耳にする方もいらっしゃると思います。ここから事故対応満足度の数字に直結する、アジャスターの仕事を紹介し、国内系大手損保とダイレクト型の損保でどんな事故対応の違いが生じているかお伝えしたいと思います。

きちんと最後まで読んでね~。事故対応のイメージが変わると思うわよ♪

 

損害保険会社のアジャスターが事故対応のキーマン!

各保険会社の事故対応力をPRするテレビCMから、事故受付している女性が事故対応のキーマンに見えますが、実は”アジャスター”という職業の方が、事故対応で最も大きな役目を果たしているのです。

このアジャスターには

  • 技術アジャスター
  • 医療アジャスター

2タイプのアジャスター業務があります。事故対応力そのものと言っても過言ではない技術アジャスターの仕事について更に確認したいと思います。

「技術アジャスターの力量」=「事故対応満足度」

私自身もこの技術アジャスターにどれだけ助けてもらったか本当にわかりません。彼らの技量によって、事故対応の質が変わるといっても過言ではないのです。

この技術アジャスターが事故対応でどんな役割を果たすか詳しく確認したいと思います。

1.損害車両の調査・修理費用の見積もり認定業務

あなたが自動車事故を起こしたら、ディーラーや自動車整備工場に事故車を入工します。入工先で修理の見積もりを作ってもらうと思いますが、その見積もりが適正な見積もりかチェックするのが技術アジャスターの最初の仕事です。

技術アジャスターはディーラーや整備工場で事故車の写真を撮り、自動車の損傷部分を確認します。写真は入工先から電送してもらうこともあります。申告された損傷部分が間違いなく当該事故で生じた破損か確認します。

修理が保険金でされる場合、修理代を上乗せするディーラーや自動車整備工場もあるため、技術アジャスターは見積もり内容をきちんとチェック&認定する必要があります。

事故処理で重要なのがこのチェック&認定スピードです。どれだけ早く、事故車の損傷部分と提出されてきた見積もりを早く・適正にチェックできるか問われるのです。

私がまだ損害保険会社で働いていたころ、技術アジャスターの方がよく遅くまで見積もりとにらめっこをしていました。

2.自動車事故の現場調査

自動車と自動車の事故で、お互いの主張がかみ合わないときに、技術アジャスターが事故現場に赴いて現地調査を行ないます。双方の自動車の損傷から、実際にどのように事故が起きたのかを確認するのです。

また、電話による示談交渉で話がまとまらず、事故の当事者たちが現場に集まって協議をすることもありますが、このようなケースにおいても保険会社から現場に立ち会うのが技術アジャスターです。

ヘッドホーンを付けた女性の方が現場に赴くことはまずありません。

3.過失割合の交渉業務(示談交渉)

自動車事故の過失割合は「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(判例タイムズ)」という本を参考に協議されます。

自損事故や追突事故、赤信号無視などの過失100%による車両損害は、皆さんがイメージする女性が対処する案件となります。保険金を支払うだけのシンプルな案件です。事故対応の経験値が浅い社員が対応します。

過失割合が100%でない場合、双方の過失割合を決める必要があります。例えば、交差点内で直進車と右折車による事故。双方の前方不注意がどれだけ過失があるのか判断をする必要があるのです。

【経験談】普通に運転していても過失がとられる事故は起きる

余談ですが、私は前方不注意で3割の過失をとられる事故を起こしたことがあります。家の裏道を直進していて交差点に差し掛かったところ、一方通行を逆走してきた、東京海上日動火災の社員に信号の無い交差点内でぶつけられました。

「おいおい..。まさか、右側からしかこないはずの道なのに左側から…。」

過失が一切無いと訴えたい事故ですが、このようなケースでも前方不注意で過失割合が3割とられるのです。裁判で過失ゼロを訴えても勝てません。

なかなか納得してもらえないような事故でも、技術アジャスターが事故の状態から適切な過失割合を提示し、契約者と相手の保険会社(場合によっては事故相手本人)に通知をし示談まで持っていくのです。

事故対応の満足度は、この3つの業務をいかにスピード感を持って達成するかにあるのです。

 

事故は早くもめずに示談して欲しいです!

そうよ、技術アジャスターさんに頑張って作業を進めてもらわないとダメなのよ~♪

 

「医療アジャスター」=「治療費の適正払い」

医療アジャスターは、事故対応満足度との関連性が低いので、さらっとご紹介いたします。

私が所属していた保険会社に、その地域にある病院のブラックリストを作っておりました。ブラックリストに載っている病院に入院すると「ケガした方を転院させるようにできないか。」と保険金支払い部門から相談されることもありました。

病院も経営です。ベットを空けるより、埋めた方が売上げが立ちます。今はわかりませんが、実際にそのような病院があったのです。

自動車事故でケガを負い、入院をされたときに、その治療内容や治療費(点数)、治療期間が妥当かどうかを調査するのが医療アジャスターの仕事です。

例えば、ケガを負った契約者はもう退院できる状態なのに、不要に長く入院していないか。このようなことをチェックして、不要な保険金を支払わないようにしているのです。

不要な保険金払いは、保険料値上げにつながってしまいますからね!

 

事故対応のキーマンである技術アジャスターはどこにいるのか!?

最初にダイレクト型自動車保険の満足度調査について数字をまとめましたが、事故が全て追突事故や赤信号無視など、過失割合が100%であれば、事故対応は修理の見積もりを確認して修理にオッケーを出し、保険金支払いはシンプルな流れです。

しかし、約半数以上の自動車事故は相手がおり、過失がある事故です。(公財)交通事故総合分析センターの平成28年度版の交通統計によると、追突事故は事故全体の36.9%にとどまり、49.9%は自動車と自動車の衝突による過失がある事故なのです。

あなたがまっすぐ走っているだけなのに、突然車が突っ込んできて前方不注意といわれ、この技術アジャスターにお世話になる日が来るのです。

事故が起きたら技術アジャスターさんに頼るカメ~

 

損害サービス・保険金サービス拠点にアジャスターがいる

事故対応の満足度はほぼ技術アジャスターの対応スピードによります。あなたが加入している損害保険会社の技術アジャスターはどこにいるかご存知でしょうか。

大手の損害保険会社であれば、損害サービス拠点や保険金サービス拠点と呼ばれるところにいるのです。一方、ダイレクト系の損害保険会社は自前で技術アジャスターを雇うことはほぼ無く、損害調査会社や鑑定人事務所に業務を委託するのです。

では、具体的に北海道の網走で事故を起こしたとします。一体、どこからアジャスターがきてくれるのでしょうか。

 

網走ってオホーツク海に面して、網走刑務所があった場所ですね!

そうよ~。札幌から自動車で約330kmのところよ♪

 

北海道の網走で事故を起こしたら、どこにいるアジャスターが対応する?

最初に大手損害保険会社2社がどのような体制で対応しているか確認してみたいと思います。

東京海上日動火災

  • 北海道損害サービス部 北見損害サービス課

損保ジャパン日本興亜

  • 北見保険金サービス課 (自動車)

それぞれ、北海道の北見市に保険金支払いの調査部門があります。ここからディーラーや整備工場に出向く形になります。では、ダイレクト型の損害保険会社の場合どうなるでしょうか。

ソニー損保

  • 北海道サービスセンター(札幌市)

その他ダイレクト系損害保険会社

自前で対応できる技術アジャスターを雇っていないため、損害調査会社や鑑定人事務所に委託して対応します。日本損害保険鑑定人協会のHPに北海道・東北地区に損害調査会社の一覧があります。ほとんどのダイレクト系損保会社が、業務委託をして調査することになると思います。

ソニー損保も、わざわざ札幌市から技術アジャスターが網走まで行くかどうか..。交通費のコストを考えると、委託せざるを得ないと思います。

事故対応の一部を損害調査会社(鑑定事務所)へ委託した場合、何が違う!?

未だに忘れられない自動車事故が1つあります。相手が、ダイレクト型の自動車保険に加入していて、過失割合でもめた事故でした。現場立会いすることになったのですが、相手の損害調査会社との話がなかなか進まなかったのです。

損害調査会社の方は、立会い当日も3県またいで事故があった現場まで来てくれました。時間がかかるんです。もめたときに時間がかかってしまったのです。

本来、こじれる案件こそ早く示談をして忘れたいのに、時間がかかってしまったのです。これは日本各地に自前で技術アジャスターを持っていないダイレクト型損害保険会社の弱点でもあるのです。

また、ダイレクト型損害保険会社の場合、実際に事故車を見ていない事故処理の担当者が損害調査会社からのレポートを元に示談交渉にあたるため、それ以上・それ以下の交渉材料なしに、示談交渉をする必要があるのです。

自動車事故のイメージを自分がガードレールにぶつける事故や、自動車が故障して動かないという生やさしいものだけをイメージしていませんか?他の記事でも書きましたが、自動車事故は死亡事故や後遺障害が残る事故があるのです。

その最悪の事態に対処するための自動車保険なのです。万が一のときの大手とダイレクト型損保では瞬発力の違いがあるのです。

このようなことが起きる可能性があると理解して、ダイレクト型の自動車保険を選ぶ必要があるわよ~♪

 

ダイレクト型自動車保険でも大丈夫!国内大手損保の子会社は同じアジャスターのサービス網を使っている

アジャスターの仕事を知るなかで、もう1つ理解して欲しいことがあります。アジャスター業務に保険金の支払いがないということです。

例えば、事故相手がいて双方過失がある事故でも、アジャスターの業務は損害額の認定、過失割合の交渉、示談までです。

  1. 事故の受付
  2. 損害の確認
  3. 過失割合の双方同意
  4. 示談
  5. 保険金の支払い

2から4がアジャスターの仕事で、アジャスターの一連業務が適切だったか確認をして5の”保険金支払い”がされます。この”保険金支払い”は損害調査部門の課長などの総合職が最終的な責任を負って行なうのです。

アジャスターが担う仕事を理解したうえで、ダイレクト型自動車保険でも大手損保会社と同等レベルのサービスを受けられる会社を紹介します。

セゾン自動車火災(おとなの自動車保険)は損保ジャパンのアジャスター網を使っている

セゾン自動車火災はSOMPOホールディングスの子会社ですが、兄弟会社に損保ジャパン日本興亜社があるのです。

ダイレクト型の自動車保険を販売しているセゾン自動車火災は、損保ジャパン日本興亜のアジャスターを活用することで、損保ジャパン日本興亜と同レベルの事故対応サービスを提供することを可能としているのです。

兄弟会社のアジャスターから届いた損害認定内容などをセゾン自動車火災の保険金サービス部門にいる社員が確認をして保険金を支払うのです。実質的には損保ジャパン日本興亜のレベルと大きく変わることは無いはずなのです。

つまり、セゾン自動車火災は全国にアジャスター網を持たないダイレクト型の保険会社とは全く違う次元で事故対応サービスを提供できる体制があるのです。

事故対応満足度を調査する中でも、このような仕組みができている会社であれば、どこで事故を起こしても他社と安心感が異なってきます。

セゾン自動車火災のおとなの自動車保険に加入を検討中の方へ。自動車保険の専門家がセゾン自動車火災の全てをまとめてみました

 

すごい!つまりは、さっきの網走で事故が起きても北見のアジャスターが対応してくる!?

そうよ~♪一番大切なアジャスターさんが全国にいるということなのよ~

 

最後に

事故対応満足度調査について、各社が発表しているデータに何の意味があるかわからないと最初にお伝えいたしました。その理由をおわかりいただけましたでしょうか。

ダイレクト型自動車保険の場合、技術アジャスターが行なうべき業務を外部委託してしまうため、自社の事故対応満足度として公表するのが正しいかどうか本当はよく考える必要があるのです。

また、どの損害調査会社に外部委託しているのかわからない中で、満足度を比較して高いとも低いとも評価することも危険なのです。オリコンや価格.com社の事故対応満足度調査は極めて危険なフェイク情報といえます。

私はダイレクト型の自動車保険に加入するのがダメとは考えておりません。保険料が安くなる分、車両保険の補償を追加することができるようになるなど、得られるメリットも大きいです。しかし、万が一のことが起きたらどうなるかも認識いただきたいのです。

自動車保険を安いから決めるのではなく、相手と過失割合でもめる事故でも精神的に耐えられる自信があるか、また、最悪の死亡事故を起こしても、自分や家族が前面に立って対応する精神的な自信があるか。

自動車から煙が出て困る程度であれば、全く問題が無いです。その先の万が一のことまで考えて、自動車保険の加入先を決めていただければと思います。

著者の情報

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日吉 浩之自動車保険の専門家
国内系大手損害保険会社でにて主に自動車販売会社の代理店営業を経験したのち、SBIホールディング社にて日本最大級の一括見積もりサイトの運営に従事。生損保約40社とのビジネスを介して、保険のダイレクトマーケティングを行ってきました。現在は株式会社プリモポストの代表取締役として、アニメーション動画(Youtube)を通じて保険をわかりやすく紹介する事業にも取り組んでいます。
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カテゴリー:編集長コラム,自動車保険